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高井 静霞; 島田 太郎; 武田 聖司; 小池 克明*
Mathematical Geosciences, 56(2), p.333 - 360, 2024/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Geosciences, Multidisciplinary)事故に伴って生じた地下汚染を適切に除染するためには、汚染分布を精度良く推定することが必要である。汚染分布の推定には、汚染源と水理地質構造の両者の不確かさが伴い、特に汚染の放出時刻歴と透水量係数の不確かさの考慮が重要である。汚染の放出時刻歴は地球統計学的な手法によって推定できるが、従来の評価は水理地質構造を既知とするものであった。また地球統計学的手法では、異なるデータを組み合わせることで(地下水位およびトレーサー試験など)、不均質な透水量係数分布を推定することも可能である。しかし、汚染が生じている地盤での広範囲でのトレーサー試験の実施は、場を擾乱させてしまう。一方汚染濃度の経時データであれば、場を乱さずに広範囲に測定することが可能である。そこで本研究では、地下水位と汚染濃度の両者を用いた、地球統計学的な汚染分布と透水量係数分布の同時推定手法を開発した。本手法の適用可能性を、不均質な帯水層中の汚染(2次元)を想定した、2つの数値実験により確かめた。その結果、透水量係数分布の正確な推定には、汚染濃度を組み合わせることが重要であることが示された。汚染分布の将来予測の精度(真値と推定値の相関係数)は、地下水位のみから推定した場合には0.67程度だったが、汚染濃度を組み合わせた場合には両ケースとも0.97と高い再現性を示した。さらに、初期汚染分布と透水量係数分布の両者の不確かさを考慮することで(条件付き実現値)、汚染分布の将来予測の不確かさを定量的に評価できることを示した。
高井 静霞; 島田 太郎; 武田 聖司; 小池 克明*
Journal of Contaminant Hydrology, 251, p.104097_1 - 104097_12, 2022/12
被引用回数:3 パーセンタイル:49.4(Environmental Sciences)放射性核種や化学物質により汚染された地下環境に対し、リスクを評価し除染対策を立てるためには、測定データから汚染物質の濃度分布とその不確かさを正確に推定する必要がある。汚染の放出時刻歴が明らかでない場合でも、これを時間方向の相関を考慮して測定濃度から逆解析することで、既知の汚染源から放出された汚染分布とその不確かさを地下水流動を考慮した地球統計学的手法によって推定することができる。しかし、従来の手法には3つの課題があった:(1)実際の汚染事例に対する3次元的な検証例がない、(2)推定値に制限がないため、負値の発生及び不確かさの増大につながりうる、(3)複数の汚染物質を対象とした検証例が少ない。これらを解決するために、本研究では地下水流動を考慮した地球統計学的手法に、ギブスサンプリングによる非負の制限を導入した。そして本手法を、Gloucester処分場(カナダ、オタワ)における地下汚染事例に適用した。評価対象は、水に可溶な3つの汚染物質(1,4-ジオキサン,テトラヒドロフラン,ジエチルエーテル)とした。その結果、1982年の測定濃度(66点)から推定した汚染分布は、全ての汚染物質に対し測定値と高い相関(相関係数R0.7)を示し、本手法の有効性が確認された。特に1,4-ジオキサンに対しては、1978年の実際の大規模投棄に応じた放出ピークが、最小エントロピー法による先行研究よりも正確に推定された。同様の放出ピークは他の汚染物質に対しても、有機炭素含有量からの遅延係数の推定範囲で概ね再現された。
加藤 友彰; 香西 直文; 田中 万也; Kaplan, D. I.*; 宇都宮 聡*; 大貫 敏彦
Journal of Nuclear Science and Technology, 59(5), p.580 - 589, 2022/05
被引用回数:4 パーセンタイル:56.94(Nuclear Science & Technology)本研究は、福島第一原子力発電所の汚染水処理施設において、地下水に一般的に含まれる天然有機物であるフルボ酸が、活性炭に吸着除去されると考えられる放射性ヨウ素の化学状態に及ぼす影響を検討した。フルボ酸が無い場合、活性炭に吸着したヨウ素の化学状態は変化しなかったが、ヨウ化物イオンはヨウ素酸イオンよりも活性炭に吸着しにくかった。フルボ酸がある場合、吸着したヨウ素酸イオンの一部がヨウ化物イオンに還元した。本研究結果は、使用済み吸着材の長期保管中にヨウ素酸イオンの還元が進行することを示唆する。
町田 昌彦; 岩田 亜矢子; 山田 進; 乙坂 重嘉*; 小林 卓也; 船坂 英之*; 森田 貴己*
日本原子力学会和文論文誌, 21(1), p.33 - 49, 2022/03
本論文では、福島第一原子力発電所の港湾口から沿岸へと流出するトリチウム量を、港湾内のトリチウムモニタリング結果から推定し、事故当初の2011年4月から2020年3月までの凡そ9年間に渡り、月間流出量を算出した。その結果、2015年の海側遮水壁閉合により、未知の流出は殆ど抑制されたことが分かった。また、この推定量を基に、日本全体の原子力施設からのトリチウム年間排出量を求め、事故前後の排出量の変遷を議論した。その結果、2015年以降、福島第一原子力発電所からの流出量は、事故前の約半分程度となっている一方、事故後の日本全体の排出量は大きく減少していることが分かった。
端 邦樹
材料と環境, 70(12), p.468 - 473, 2021/12
東京電力福島第一原子力発電所の汚染水中の腐食環境の評価においては、建屋内が放射線環境下にあるため、水の放射線分解(ラジオリシス)により生成する過酸化水素(HO)等の酸化剤の影響を考慮する必要がある。ラジオリシス過程及びそれにより発生する酸化剤の生成量は水質や放射線の線質などに依って変化する。そのため、この10年間、水の放射線分解に寄与しうる様々な要因(海水成分、酸化物の表面の作用、核種等)を対象に研究が進められてきた。本稿では、汚染水中の腐食環境のより深い理解に繋げるため、これらの要因のラジオリシス影響について解説する。
高井 静霞; 島田 太郎; 武田 聖司; 小池 克明*
情報地質, 32(3), P. 95, 2021/09
GEOINFORUM-2021における発表「地下水流動を考慮した地球統計学的手法による汚染濃度分布の推定」が評価され、2021年度日本情報地質学会奨励賞を受賞した。今回の受賞に関する所感を同部会誌に寄稿する。
眞田 幸尚; 操上 広志; 舟木 泰智; 吉村 和也; 阿部 智久; 石田 睦司*; 谷森 奏一郎*; 佐藤 里奈
日本原子力学会和文論文誌, 20(2), p.62 - 73, 2021/06
内閣府原子力被災者生活支援チームは、2022年春頃から2023年春頃までに避難指示解除が計画される「特定復興再生拠点区域」において、放射線防護対策を検討している。放射線防護対策を検討するにあたり、当該区域の汚染状況の把握と被ばく線量の評価は必要不可欠である。福島第一原子力発電所の事故以降、数々のモニタリングにより空間線量率分布が評価され、またこの空間線量率を元に、被ばく線量が推定されてきた。一方、当該区域は比較的空間線量率が高く、放射線防護に対してより慎重な配慮が必要であるため、被ばくに係る詳細な情報が求められている。そこで本研究では、詳細な汚染状況と、当該区域の状況に即した被ばく線量を評価することを目的とし、(1)無人ヘリコプターによる空間線量率の測定、(2)大気中の放射性セシウム濃度の測定、(3)代表的な行動パターンにおける外部・内部被ばく線量の評価を実施した。併せて、空間線量率分布のモニタリング手法と、被ばく線量評価方法の高度化を検討した。今後の放射線防護において有効な、新たな空間線量率のモニタリング手法と被ばく線量評価方法の妥当性を示した。
長谷川 雄太; 小野寺 直幸; 井戸村 泰宏
第34回数値流体力学シンポジウム講演論文集(インターネット), 3 Pages, 2020/12
都市風況および汚染物質拡散解析を行うため、局所細分化格子ボルツマン法を用いた実時間アンサンブル計算コードを開発した。開発したコードを、産業技術総合研究所による風洞実験、およびオクラホマシティでの野外拡散実験JU2003と比較した。風洞実験に対する検証では、風況は実験とよく一致するとともに、トレーサ物質の濃度は、環境アセスメントガイドラインで示されている評価指標であるFACTOR2に対し、61.2%の正答率を達成した。野外拡散実験JU2003においては、風速の瞬時値は実験とよく一致したが、風向は最大で100のずれがあった。一方で、トレーサ物質濃度の平均値は、全時間区間においてFACTOR2を満たした。以上の結果より本コードは環境アセスメントに対して十分な精度を持つことを示した。
眞田 幸尚
Isotope News, (772), p.21 - 25, 2020/12
空気中や水中での飛程が比較的長い線は、直接測定することが簡単だが、飛程の短い線は直接測定することが難しく、早期の異常検知や環境影響の評価のためリアルタイムのモニタリング技術の確立が求められていた。弁別型ファイバ検出器を用いた水モニタの開発を行った。ここでは、モニタの性能及び開発経緯についてまとめる。
町田 昌彦; 山田 進; 岩田 亜矢子; 乙坂 重嘉; 小林 卓也; 渡辺 将久; 船坂 英之; 森田 貴己*
Journal of Nuclear Science and Technology, 57(8), p.939 - 950, 2020/08
被引用回数:9 パーセンタイル:71.58(Nuclear Science & Technology)2011年45月にかけて発生した東京電力ホールディングス・福島第一原子力発電所2号機及び3号機からの汚染水の海洋への直接流出以後、神田は相対的に小さいが連続的な放射性物質の流出が引き続き起こっていることを指摘している。しかし、その期間は2012年9月までであり、その後の流出量の推定についての報告はない。そこで、本論文では、その後を含めて2011年4月から2018年6月までの7年間に渡りCsの流出量を推定した結果を報告する。報告のない時期、国・東京電力ホールディングスは、流出を抑制するための努力を続け、港湾内海水の放射性核種濃度は徐々に減少している。われわれは、一月単位でCsの流出量を二つの手法、一つは神田の提案した手法だがわれわれの改良を加えた手法とボロノイ分割によるインベントリー評価法を使い評価した。それらの結果から、前者の手法は常に後者の手法と比べて保守的だが、前者の後者に対する比は1桁の範囲内であることが分かった。また、それらの推定量から簡単に沿岸域に対するインパクトを評価し、特に魚食による内部被ばく量を推定したところ、福島第一原子力発電所(1F)の海洋流出量に基づく内部被ばく分は極めて小さいことが分かった。
阿部 徹*; 平野 史生; 三原 守弘; 本田 明
原子力バックエンド研究(CD-ROM), 27(1), p.3 - 11, 2020/06
硝酸イオン化学的変遷挙動評価モデル(NEON)は、地層処分施設およびその周辺における硝酸イオンの化学的変遷挙動を把握するために開発された評価ツールである。硝酸イオンはTRU廃棄物に易溶性の塩として含まれており、放射性物質の移行挙動に影響を及ぼす可能性がある。したがって、地層処分の安全性を評価するための基礎情報として硝酸イオンの化学形態の変化を評価する必要がある。NEONでは硝酸イオンと、金属,鉱物および微生物との反応がモデル化されており、このうち微生物との反応は微生物の活動による窒素循環等の過程を取り入れて構築している。各反応モデルは室内実験の結果と比較され、おおむね再現できることが確認されている。そこで、TRU廃棄物の地層処分を想定したスケールにおけるNEONの適用性を評価することを目的として、地下水の硝酸性窒素汚染の天然事例について再現解析を実施し、モデルの適用性を評価した。再現解析には広島県生口島の事例を取り上げた。NEONを用いて計算された硝酸イオンおよびその化学変遷物であるアンモニウムイオンの濃度分布は、数百メートル規模でおおむね再現しており、NEONの広域的条件における適用性が示された。
町田 昌彦; 山田 進; 岩田 亜矢子; 乙坂 重嘉; 小林 卓也; 渡辺 将久; 船坂 英之; 森田 貴己*
日本原子力学会和文論文誌, 18(4), p.226 - 236, 2019/12
2011年45月にかけて発生した東京電力HD・福島第一原子力発電所2号機及び3号機からの汚染水の海洋への直接流出以後、神田は相対的に小さいが連続的な放射性物質の流出が引き続き起こっていることを指摘している。しかし、その期間は2012年9月までであり、その後の流出量の推定についての報告はない。そこで、本論文では、その後を含めて2011年4月から2018年6月までの7年間に渡りCs-137の流出量を推定した結果を報告する。報告のない時期、国・東京電力HDは、流出を抑制するための努力を続け、港湾内海水の放射性核種濃度は徐々に減少している。われわれは、一月単位でCs-137の流出量を二つの手法、一つは神田の提案した手法だがわれわれの改良を加えた手法とボロノイ分割によるインベントリー評価法を使い評価した。それらの結果から、前者の手法は常に後者の手法と比べて保守的だが、前者の後者に対する比は1桁の範囲内であることが分かった。また、それらの推定量から簡単に沿岸域に対するインパクトを評価し、特に魚食による内部被ばく量を推定したところ、1Fの海洋流出量に基づく内部被ばく分は極めて小さいことが分かった。
駒 義和; 村上 絵理奈
Radiochimica Acta, 107(9-11), p.965 - 977, 2019/09
被引用回数:1 パーセンタイル:11.15(Chemistry, Inorganic & Nuclear)東京電力福島第一原子力発電所は、2011年3月11日に発生した地震と津波に被災し、放射性物質による重大な汚染を引き起こした。将来、廃棄物の処理や処分を行うために汚染した物質が分析されており、それにより得られたアクチニド核種の分析データを概観した。汚染水からアクチニド核種が検出されている。汚染水は化学的に除染されているが、アクチニド核種の濃度は時間とともには低下しておらず、損傷した燃料から冷却水へゆっくりと溶出しているとみられる。土壌に検出されるPu, Am, Cmは損傷した燃料に由来するが、Uは天然が支配的である。TRU核種は深部へのゆっくりとした移行が示唆される。瓦礫類の汚染は不均一であり、核分裂生成物とともにアクチニド核種も検出される。植物は、原子炉建屋に近い場所の落葉からTRU核種が検出された。
島田 太郎; 三輪 一爾; 武田 聖司
日本原子力学会誌ATOMO, 61(7), p.531 - 534, 2019/07
福島第一原子力発電所(以下、1Fという)敷地内に保管されている表面線量率5Sv/h未満の汚染がれき類を資源化して敷地内に限定して再利用することが検討されている。1F敷地内のように放射線管理が実施されている現存被ばく状況において、汚染した資機材等の限定的な再利用の考え方などが示された例はない。そこで、適切な安全規制のために、1F敷地内での線量管理下の現存被ばく状況における再利用評価の考え方、1F敷地内での運用されている作業者及び周辺公衆の安全確保策に応じためやす濃度算出の方法論を構築するとともに、1F敷地内での道路材及びコンクリート構造材に関して用途別の資源化物のめやす濃度を試算して、とりまとめた。本報ではこの評価の方法について解説するとともに、1F敷地内の限定的な再利用の評価の一例について紹介する。
瀧谷 啓晃; 荒谷 健太; 粟谷 悠人; 石山 正弘; 手塚 将志; 水井 宏之
デコミッショニング技報, (59), p.2 - 12, 2019/03
新型転換炉原型炉ふげんは、2008年2月に廃止措置計画の認可を受け、廃止措置に取り組んでいる。2018年3月に廃止措置の第1段階(重水系・ヘリウム系等の汚染の除去期間)を終了し、現在第2段階(原子炉周辺設備解体撤去期間)に移行している。本報告では、新型転換炉原型炉ふげんの廃止措置の第1段階における成果について紹介する。
斎藤 公明
原子力のいまと明日, p.148 - 151, 2019/03
日本原子力学会から発刊の単行本「原子力のいまと明日」の執筆を一部担当し、福島第一原子力発電所事故により大気中に放出された放射性核種による環境汚染の特徴ならびに空間線量率の経時変化の特徴について、一般読者に分かるように平易な表現を用いてまとめた。特に、空間線量率が物理半減期による減衰に比べて顕著に速く減少してきた事実とその要因に関して掘り下げた説明を行った。
島田 太郎; 三輪 一爾; 武田 聖司
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 6, p.203 - 207, 2019/01
福島第一原子力発電所(以下1F)敷地内に一時保管されている放射能で汚染されたがれき類を資源化して敷地内のある特定の用途に限定して再利用することが検討されている。1F敷地内のような放射線管理が実施されている現存被ばく状況において、汚染した資機材等の再利用に対し、線量のめやすとなる数値は現在まで提示されていない。そこで、本研究では、現状の1F敷地内のバックグラウンド(BG)線量率に着目し、資源化物(線源)が使用された場所において上昇する1m高さでの空間線量率が、BGの線量率変動範囲を超えないことを必要条件とした。また、算出されためやす濃度による再利用が作業者及び公衆へ影響を与えないことを、作業者の追加被ばく線量、敷地境界への線量寄与、地下水核種濃度を評価することによって確認する評価フローを構築した。さらに構築した評価フローに従い、資源化した骨材を道路路盤材及びコンクリート構造物の基礎に適用する場合を想定し、評価対象核種のめやす濃度を試算した。
吉澤 厚文*; 大場 恭子; 北村 正晴*
人間工学, 54(3), p.124 - 134, 2018/06
東日本大震災に端を発し、東京電力福島第一原子力発電所は、放射性物質を大量に放出する過酷事故となったが、その後冷温停止状態を達成した。しかし、福島第一原子力発電所事故に関するさまざまな機関による調査報告書は、事故に至った過程に着目している一方で、事故の拡大の防止や被害の減少についてはほとんど着目していない。本研究は、福島第一原子力発電所の3号機における、冷温停止状態達成までの過程に着目した。公開データに基づき、事故の発生から冷温停止状態達成に至るまでの時列を整理し、それらを人間工学的視点によって行為群を分類した上で、状況の回復に重要な意味をもつ対処をm-SHELモデルを援用して分析した。このようなアプローチにより、状況の回復に必要な行為に関する新たな教訓を得た。
坂本 浩幸*; 赤木 洋介*; 山田 一夫*; 舘 幸男; 福田 大祐*; 石松 宏一*; 松田 樹也*; 齋藤 希*; 上村 実也*; 浪平 隆男*; et al.
日本原子力学会和文論文誌, 17(2), p.57 - 66, 2018/05
福島第一原子力発電所の事故によって放射性セシウムによって汚染されたコンクリート瓦礫が発生しており、さらに、将来の原子炉の廃止措置に伴って多量の放射性コンクリート廃棄物が生じることが想定される。床や壁等のフラットな表面の除染には既存技術が有効であるが、コンクリート瓦礫に対する除染技術の適用性については課題がある。本研究では、パルスパワー放電技術の適用性可能性に着目して、汚染コンクリートの骨材とセメントペーストへの分離と、それぞれの放射能測定による基礎的な試験と評価を実施した。試験結果より、汚染コンクリートの骨材とセメントペーストへの分離によって、放射性コンクリートの除染と減容が達成される可能性が示された。
燃料研究棟汚染事故に関する原因究明チーム
JAEA-Review 2017-038, 83 Pages, 2018/03
2017年6月に燃料研究棟で発生したプルトニウムによる汚染・内部被ばく事故では、核燃料物質を収納した貯蔵容器の蓋をフード内で開封した際に内部の樹脂製の袋(PVCバッグ)が破裂し、ウランとプルトニウムの一部が実験室内に飛散するとともに作業員の内部被ばくに至った。事故発生後に組織された原因究明チームは、貯蔵容器内部のPVCバッグ内圧が上昇して破裂に至った原因を明らかにするため、当該貯蔵容器内容物に関する情報を、帳票類及び聞き取りによる調査、内容物の観察・分析によって収集した。さらに、有機物の放射線分解によるガス発生やPVCバッグの放射線劣化と破裂現象に関する検証試験を行い、必要なデータを取得した。これらをもとにフォルトツリー解析を行い、各種要因を定量的に評価した結果、内圧上昇の主原因がエポキシ樹脂の線分解によるガス発生であることを特定した。本調査報告で述べるガス発生量や内圧上昇推移の評価手法は、他施設での核燃料物質の貯蔵に際しても大いに参考となるものであり、活用されることを期待する。